よく喋る子どもでした。親からは、「口から生まれた」、「口が達者」などと言われていました。
私が現在も口が達者な人間かどうかは定かではありませんが、そうであるとすれば、世間一般の弁護士像に合うといえます。ただ、実際の弁護士業務は、書面でのやりとりが多く、世間のイメージと異なり、必ずしも口達者であることは要求されないといえます。実際の法廷では、テレビドラマや映画の世界と違って、丁々発止やり合うようなことなどほとんどないからです。
しかし、私が弁護士として大切にしたいのは、依頼者の声に真摯に耳を傾けることです。
一般の方は、一生に一度あるかないかの困難な法律問題に直面し、弁護士をはじめとした法律家の存在を思い浮かべ、思い悩んだ末にようやく法律事務所(弁護士事務所)や相談所等の門を叩くのが通常でしょう。
弁護士業界は法律事務所等の敷居を低くすべく努力すべきですし、実際も努力しているのですが、それでも一般人にとってまだまだ、法律事務所は非日常の場であり、緊張する空間なはずです。そうした空間に勇気を持って足を踏み入れた方が、何を望むのか。自分の悩み、苦しみなどを勇気をふり絞って打ち明けたことに対し、とうとうと法律論を語る法律家ではないでしょう。真摯に耳を傾け、意を汲み取ってくれる法律家だと思うのです。
ただ、当然のことですが、単に耳を傾ければよいというものではありません。法律家ですから、法的問題についてよりよい解決手段を探索し、事件を解決へと導かなければなりません。
また、”耳を傾ける”ことを強調しすぎて誤解されてもいけないので急いで付け足しますが、依頼者の声に耳を傾けるとはいっても、それは“依頼者の言うことを何でも受け入れる”、”無理難題な意見を貫き通す”といったことを意味するものではありません。
私は、依頼者の希望であっても、おかしな主張や徒に紛争を拡大してしまうような考えに対しては、“それはあなたのためにならないですよ”ときっちりと伝えていきたいと思っています。おかしな主張を通すことは、正義に反するだけでなく、それを実現したとしても、決して幸せになどならないと考えるからです。
依頼者の思いをしっかりと受け止め、事件が終わった際に、“先生に相談して良かった”と言って頂けるよう地道に取り組んでまいります。